農と自給のこれから


楠クリーン村の生産担当 今井智衆の原稿です。
これまでの振り返りと今後の展開について、書かれています。
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楠クリーン村の農業はこの6年間、維持管理と品質の安定を目標にしてきた。茶は適切に草を刈り茶工場の機械を正しく使い、きちんとしたお茶を作ることを目標に。
稲作は担当スタッフの移り変わりもあり、やはり年間通して正しい時期に問題なく作業を進められるかを。
野菜、ブルーベリー、養鶏も概ねその様な感じであり、6年間の間に担当者が入れ替わりつつも、正しくできることを目標に努力してきた。

担当が移り変わるたびに私は現場を引き継いで継承し、いつしか私は「農業」担当となり農作業を一身に請け負う立場となった。そして今年は、これまでの楠的な農業の集大成と呼べるような、今までの流れで辿り着ける到達点のようなものを感じている。勿論改善の余地はまだまだあり、管理も万全ではない。

しかし、残っているのは細かい改善が主であり、大きな道筋は見えてきた 。私は今年、農業を次の段階に進める時期が来たと思っている。

次の段階に必要なこと、それはずばり独自性だと思う。ありきたりな言葉だけど、別に付加価値をつけ加えるとかそういう話ではない。山を使いたい。それだけである。


楠クリーン村は約20ha(約6000坪)という広大な広さを持つ、木々の生い茂った山だ。茶の木があり、雑木があり、広葉樹があり、杉林があり、竹林がある。
しかし人が手入れをしていない山は暴力的で人を寄せ付けない。だから今までは、人が管理できる僅かなスペースのみを利用して暮らしてきたが、森には資源がある。
言葉通り山のような資源が未使用のまま眠っている。これを使わずして楠の農業は次の段階へは移れはしない。

なぜなら私が考える次の段階とは、里山を主軸とした循環型農業であるからなのだ。

現代で循環型農業を営むには、既存の知識に囚われずに良く観察し、柔軟に発想を広げていく必要があると思っている。別に既存の知識を無視するというのではなく、私はむしろ近代農法がどうやって出来たかひも解いて理解していきたい。

現在広く知られている農法は、基本的に近代的な手法を行うことを前提に考えられている。野菜の間隔一つとっても、科学的な理由と実証データがあり、最も生産効率が高まるポイントを抑えている。
だからそこから外れる場合、どう外れたかをきちんと理解して、ではどう変えていくかを考える。先人の知恵に乏しい現代では、近代農法を逆に辿ることで、かつて日本人が行っていた里山農業に辿り着くヒントになるのではないか。



全てが昔の方が良いとは限らないが、調べた限り、近代化が置き忘れてしまった知恵と技術はあまりにも大きいと感じている。だからそれを、山の資源を活用しながら一つ一つ確かめていきたい。

最近、特に地元の大学生を中心としたインターン生と関りを持つことが増えてきた。スタッフの講演を聞いたり、噂を聞きつけ自力で辿りついた者もいる 。自分から関わって来ようとする学生は、問題意識が高く好奇心も旺盛で、価値観に縛られない人が多い。
今まで多くのインターンを受け入れていたが、今年に入ってその様子が大きく様変わりした。とても意欲的で一緒に働きたいと思える人が何人もいたのである。

彼らの中では楠でやりたいことをイメージしている人や、自分の専門分野について、既存の授業では満足出来なくなった者など、個性豊かだ。
実は私も、彼らに感化され新しい段階を踏もうと思い立った部分もあり、しかも林業や建築に興味のある学生までいたので、今まで出来なかったことが出来そうな予感がしているのだ。
彼ら学生との協力を抜きには、自分の殻を破るのは難しいだろう。

新しくやりたい取り組みはいくつもある。落ち葉や雑草に竹、鶏糞など利用した堆肥の開発、間伐材を利用し古い知恵も導入した小屋、自給ホダ木でシイタケ栽培など、枚挙がない。楠が真の意味で自給自足と呼べる日は案外近いかもしれない。

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