シイタケ栽培の話

シイタケ原木の菌打ち作業。

楠にしばしばイノシシや鹿などを持って来てくれる猟師のたっさんの別の顔。どうやら、本人は自宅でシイタケ農家をしているわけではないが、シイタケの栽培についてめちゃくちゃ詳しいらしい。
本当に、何者なんだろうかと考えてしまうほど、たくさんの顔を持つおじいちゃんだ。


そんなおじいちゃんから手ほどきを受けながら、シイタケの菌床を打ち込む穴をあけていく。最初は、指示にただひたすらに従いながら、おじいちゃんの指のさす先へ穴をあけてゆく。

ただ、黙々と…。

穴をあける木の太さ、皮の厚さ、そんなこんなを考慮しながら穴をあけてゆく。菌がしっかりと根を張るには皮が分厚いと時間がかかるらしく、皮の薄い部分が最適なんだとか。樹皮の表面を見た時にデコボコしているへこんでいる部分がそれである。穴と穴の間隔はおおよそ10~15㎝。木が太けりゃ、ちょっと間隔を狭くし、細けりゃ大きくとる。


段々慣れてくると、おおよそ要望の通りのところに言われずとも穴をあけられるようになってきて、「シイタケ農家に婿養子に行けるぞ!」と、お墨付きを頂けた。
シイタケ農家に興味がある人は是非、やってみてほしい。血縁関係込みで農家になれます。笑

いよいよ、穴が開いたら、今度は菌床を打ち込んでゆく。トントンと木に金づちの当たる音が心地よく、木魚でも叩いてるかのようないい音が響く。


原木を置く場所は、ある程度湿気があり、かつ風通しのいい場所である必要があるので、竹藪のそばへ。
風で竹がなびく、葉が擦れる、カタカタ、シャワシャワというのをBGMにトントン、カンカンと、金づちの音が響く。


えも言えぬような心地よい時間。打ち込み終わった端から、原木を互い違いにたてかけ、並べてゆく。
そうすることでどこからシイタケが生えてきても収穫しやすいんだって。
整然と並べ切られた原木の姿は壮観で、静かで竹の音がするばかりなのに、心は酷くザワザワと騒ぎ立てているような感覚があった。


実は、この作業の数日前に前の世代の原木から生えたシイタケをてんぷらにして食べており、それを私はいたく気に入っている。
それを思い返して、既に”美味しそう…”と、胸中でザワザワしていた。

普段口にする野菜や、肉や、キノコ、その他たくさんの食材、それらがどうやって育てられているのか。頭では学校で勉強したこともあるから知っているのだけれど、それを目の当たりにして、実際に身体を動かして体験するというのはそれとは一線を画したものがある。
例えるなら、仕事を頑張った後のビールのような幸福感と沁み方がある。積み重ねた練習の成果が本番で発揮できたかのような充足感がある。

そんな感覚と一緒に、私はシイタケをたらふく頬張りたい。


山口大学感性デザイン工学科3年 
前田稜汰

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