優しくない優しさ


楠クリーン村の仲間である「大津島海の郷」のお手伝いに参加した山口大学生・前田君の原稿です。
楠クリーン村も、大津島海の郷(山口県周南市)も、もともとは山口大学の学生が起業して立ち上げた団体です。
楠クリーン村は、中山間地で自然の中での暮らしや農業を体験できる場所。海の郷は島で海に近い自然を体験できる場所として、協力しながら活動してます!

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 9月末日。大学生の夏休みのほぼ最終日。暇に耐えあぐねていたところに話を頂き、大津島でのイベントスタッフに参加することになった。島にたどり着いた当時あまりに暗くて視界が無いため、景色の感動やなんかよりも何ができるのか、力になれるのか、といった不安で始まった前泊。
 翌朝、やっと見られた2日間過ごす地の景色にテンションが上がって仕方がなくなった。出身が京都の盆地のど真ん中。山に囲まれた地形ではあるものの、その多くが観光地として整備され 海は遠く 自然も多くはない土地で育った者としては、田舎の村落を目にすること自体が珍しい体験である。テンションが程よくスローダウンしてくる頃、イベントに参加する子どもたち、親御さんたちが到着しイベントが始まった。

【2年連続、楠クリーン村の田植えにも参加した前田君。なんでも楽しむ前田君!ということで、大津島の助っ人にも声かけしました。】


 さて、このイベントの何が面白いかというのが、主旨にある。
「特別扱いしないこと。優しくしない優しさ。」
釣りをして(自然体験をして)調理し、命を頂くというイベント自体は多く存在する中、子どもたち、特に小学校低学年や未就学児にあたる子たちに本人が望めば包丁を握らせるというイベントは自分が知る限り多くない。
お膳立てされた状態で、レールに沿って楽しさを疑似体験するのではなく、意思に従って動き時に危険をはらみながらも冒険、挑戦していく。大人も一緒。捌いたことのない人も挑戦する。

 当時自分が小学生だったころや、大学生になった今でも、安全装置のガンガンに効いた疑似成功体験の多さは身をもって感じ、時に辟易することもある。そんな中、こんないいイベントがあったんだ!と、シンプルに感動した。参加者の満足度の高さやリピート率の高さにも納得である。
 釣れるポイントや投げ方、最低限は伝えるのだけれど、よりたくさん釣ろうと思えば、よく釣れている人に聞くのが一番早い。間違いや失敗から学び、成功するための秘訣を成功している他者から学び取る。間違えることは恥ずかしいことではない。一時の恥を恐れず成功する他者に尋ねるだけで成功の片鱗を手にすることができる。
そんな、当たり前だけれど忘れているような事実に気づくことができる。




 さらに、自分と世代の違う人たちとの交流。同じ活動の中で、人生の歩んできた長さが違う彼らが何を目の前の物事に対して感じ取るのか。生まれてから大学生まで、同年代で固められた中で生活する。その中で親や親族以外の違う年代の人と語らうことは多くはない。他者の考えを聞くことは非常に面白い。夜、アルコールを交えて親御さんたちと語らう中で感じた。自分より一回り以上も若い者に対して敬意を払えること、家族を守ると決めて働いていること、覚悟を持っていきる大人たちはカッコいいのだ。

 イベント中、カメラ係としてファインダー越しにすごくたくさんの良い顔を見せてもらった。釣れた時、捌けたときのドヤ顔、一瞬で仲良くなった友達と遊ぶ時の満面の笑み、石風呂から出た瞬間の汗だくの顔、真剣に魚を捌く顔。どれもとても素敵で、カメラマンとしてもすごく楽しい一泊二日だった。大学生活で、この一泊二日ほど追い求め、走り回った日々はないように思う。



山口大学感性デザイン工学科3年 前田稜汰


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